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99: カリフォルニア州での運転免許証の取得

September 5, 2022

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アメリカに越してきてから7年が過ぎ、ようやくカリフォルニア州の運転免許を取得するに至った。新しい他人の記録を読めると嬉しいので委細を書き残しておく。自分が見つけられた直近のログは白山さんのものだった。

カリフォルニア州の居住者としての自動車の運転は、居住する気で来たなら早々に免許証を取得し、国際免許証での運転を取りやめることが求められる。なので、多くの移住者にとっては最初に倒すべきタスク群のひとつになる。自分の場合は必要そうだったら取るかなと思っているうちに、Uber や Lyft が登場してきて殊更そう思うチャンスを失っていた。身分証明の為に取るというのもよく言われるが、同じところに申請に行けばもらえる、カリフォルニア ID という運転が許されない運転免許証みたいな板で事足りていた。

同様の体験をしている人は多く居るように見えるが、子の登場で全てが変わった。毎週の生鮮食品の買い物で運べる量の限界やその頻度が自分の生活の貴重な時間を奪うのが苦になってしまった。子の成長に合わせて出かけることも増えるだろうし...と考えるとさすがに公共交通機関やライドシェアアプリではやり過ごせないのを直感する。車というやつを所有するのを視野に免許の取得を目指すことにした。

父が自宅から近いところに勤めていたのもあって免許はあれど車を所有しない家庭で育ち、公共交通機関(特に西鉄バス!)と慣れ親しんでいたこと、上京してからはお金をいっぱい持っている人に縁があるものくらいに思って暮らしていたので、たまの帰郷でレンタカーや親族の車を乗り回す以外には生きてくる中で免許証が必要になる、ましてや車を所有するなど想像もしないことだった。何となくフルタイムで就職する前の時間が存分に取れるうちに自動車学校へ行っておくかと取ったのが日本の運転免許だったので、早ければ数日以内で取れてしまうアメリカで取得する動機が湧くまで相当時間が経ってしまった。

筆記試験

行程は日本と逆で、筆記を通ったら仮免、実技を通ったら免許証発行という流れ。ウェブで申請してからカリフォルニア州の DMV に行って、窓口で視力検査、支払い($39)ののちに写真撮影、CBT での試験に通ると紙の仮免許証が発行される。試験の問題は公開されている Driver’s Handbook を覚えていれば通るとされているが、116 ページの英語の PDF を熟読する元気はないので、試験対策が出来るアプリを使って空き時間で勉強した。アプリ上での試験で満点が何度か続いてから DMV に赴き、2時間くらいの滞在で仮免許を取得できた。

悪評をよく聞いていた DMV だが、コロナの状況になってから人が減ったことや、彼らのオペレーションがかなり改善されたこともあってか、ほとんど不満を感じることがなくスムーズに事が進んだ。

いくつもコンピュータが並んだブースに入って、立ったままマウスかタッチパネルを操作して試験を受けられる。3問くらい中盤までに間違えてしまい(回答即時、正解がわかる。学ばせるという意味ではとても正しい)、これはまずいかもしれないと思っているうちに合格となった。落ちてしまったのか、周りの人が叫ぶ声が度々聴こえてくる中でヒヤヒヤした。

CBT になる前は、試験官が甘やかしてくれるケースがあったなんてことも聞いていたが、コンピュータは無情に申請者を落として、3回の挑戦を以て申請を破棄する。指紋認証もあって替え玉も難しそうで、得意でない人にとっては鬼門となっているように見えた。

申請時に免許証に使う写真を撮るというのを、試験のことしか考えずに行ったので指名手配犯みたいな写真を撮られてしまったのが悔やまれる。 Real ID という本人確認を厳格化したカード(近く国内旅行時には必須になるそう)を申請すると、既に持っているカリフォルニア ID がその場で無効になってしまうということだったので、Real ID 無しで申請したため、後日 Real ID 以降のために手続きをするときにはまともな面で写真を撮りたい。

実技試験

Behind-the-Wheel Drive Test と呼ばれている。

筆記がスムーズだったので、このまますんなり通りそうな気がしていたら甘かった。最終的に免許証を得られるまで、3回も実技試験を受ける羽目になった。実技試験で使う車両の持ち込みが必要で、免許証を持っていないのに車を準備するという鶏と卵のような状況では、知人やそういうサービスに頼る他ない(移住後すぐなら国際免許でどうにかなったのだろう)ので、再試験に際してどうしてもコストがかかるし、この準備が億劫だから今まで免許証取得を避けていたというのもある。

カリフォルニア州の DMV の中でもサンフランシスコオフィスは道路状況的に厳しいから辞めておけとよく言われるのも気にせず、運転には多少の自信が無用にあったので、友人を頼り現地を走る体験を4時間くらいやってから YouTube で実際のコースのひとつを紹介してくれている動画を何度か観て、筆記試験を受けたサンフランシスコのオフィスに勇み足で向かった。唯一サンフランシスコを勧められる理由は縦列駐車の採点を行わないことだろう。借りた車をいきなり使う立場なので、車のサイズ感を見誤りがちな自分にとっては重要だったかもしれない。

1回目は細かなケアを怠ったこと、不運な道路状況(完全に詰まった車線への車線変更を求められた)に案の定出くわしてしまい、マイナーエラーを17個積み上げて落とされた。15個まで許容される。言い訳をすると試験官がかなり厳しめの人だった。それは厳しすぎないかという減点箇所が5個以上あったので落とされるべくして落とされたのではないかと疑心暗鬼にさせられる。

2回目は試験官との相性も良く、時間帯からか道路状況も悪くなかったのか、マイナーエラーが3個。しかも2個は場内の絶妙なカーブに直進して出入りするのにウインカーを出さなかった(1回目では指摘/減点されなかった)ことによるものなので、路上ではほぼ完璧という順調さだったのだが、最後の左折時に横に居た自転車に道を譲らなかったことでクリティカルエラーとされて落とされた。自転車は先を譲ってくれていたのだけど、確かに危険な運転とされても仕方がないと納得した。

この最初の2回はバスケさんが時間と車を提供してくれて 🙏、2回目の様子は Vlog という形で公開されている。

合格した3回目は、前2回を踏まえると何故通ったのかわからないくらいには自覚するエラーがあった。なんなら試験官は途中で一度声を荒げた。平日に時間を取るのも仕事の調整が面倒で、偶然祝日に営業している日を見つけて受けに行ったら最悪の道路状況で運転することとなってしまった。1回目よりも更に車線変更が苦しく(4車線の端から端へ1ブロックを走るうちに移るのは正気じゃない)、横断歩道を渡るのか渡らないのか判然としない振る舞いをする公園帰りの陽気な若者の集団(先頭の男は後ろ歩きで集団と談笑していた)に二度出くわして難儀した。運転と直接関係のない操作で困ったこともあって(車が動いているときは必然的に近くに居る前提で)車の持ち主のスマホと Bluetooth で自動接続される仕組みが、持ち主と意図せず離れることで突然オーディオが再生される状態となり、試験官と試行錯誤して止め方を見つけるという一幕もあって、この時点でもう落ちたのではないかと気が気ではなかった。

3回も実技試験を受ける中で、全て違う試験官に当たり(3人でローテーションしているようで窓口に来た順で割り当てられる)、3回とも違うコースを走ることになった受検者はなかなか居ないのではないだろうか。1回目が YouTube で見つけた動画と一致していた最も簡単なコースを引いたところで運を使い切っていた。

DMV がオフィスごとに通過率を公開しているとかそういう関係上、3回目は甘めに採点するみたいなことになっているのだろう。再試験の度に支払う$8を限界まで回収されてしまった上で、歯切れの悪いまま免許証を貰える結果となり釈然としないが、一週間後にはカードが届き、今はめぼしい車種を見つけることを楽しんでいる。